平成28年度総会・講演会の実施報告

 午前中の理事会・評議員会において、平成27年度の事業報告や会計報告、平成28年度の事業計画や会計予算が承認されました。
 午後から平成28年度の総会及び講演会を下記のように開催いたしました。
会員の参加による総会では、田口会長のあいさつの後、理事会・評議員会で承認された平成27年度の事業報告や会計報告、平成28年度の事業計画や会計予算が報告されました。
 その後の講演会は、会員以外の参加希望者も加えて行われました。  

総 会

日 時
 平成28年6月14日(火) 14:20 〜 14:40
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
議 題
 1.平成27年度 事業実績報告について
 2.平成27年度 収支決算報告について
 3.平成28年度 事業計画について
 4.平成28年度 収支予算について

講演会

日 時
 平成28年6月14日(火) 15:00 〜 16:30
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
演 題
  「ここまできたアルコール依存症治療~薬物治療にしぼって~」
講 師
 天野 宏一先生(各務原病院院長)
講演の概要
 アルコール依存症の治療は、「閉鎖病棟」でのアルコール離脱期(1014日)を除いて、飲酒の自由なところで病気を自覚し、“酒を断ち続ける”ことが唯一の回復の手段であり、それを実現するため専門医療機関への通院に加え、断酒会やAA(アルコホーリック・アノニマス)などの自助グループに参加し、断酒生活を積み上げていくことを主眼に治療が行われてきました。
 そこに新たに従来の抗酒剤(シアナマイド、ノックビン)のようにアルコールの代謝産物である「アセトアルデヒド」の代謝を阻害して悪酔いさせることで飲酒できない状態にするものではなく、脳内に作用して飲酒欲求そのものを抑えて“断酒生活の維持”を補助する新断酒補助剤(アカンプロサート、商品名:レグテクト)が平成255月に発売され、有効かつ強力な治療手段に加わりました。
 さらに、平成27年より飲酒量低減ナルメフェンの治験が進捗しており、ここ12年のうちに日本でも上梓されることと思われます。各務原病院でも11名の患者さんの協力を得て、1年間治験をしています。節酒薬のナルメフェンが使えるようになると、薬物療法が広範囲に亘ってできるようになります。
 以下、治療薬について簡単に説明します。

(1)抗酒剤について
 抗酒剤(嫌酒薬)には、アルコール酸化過程を阻害する作用があり、少量の飲酒下でもアセトアルデヒド蓄積によって顔面紅潮、発汗、心悸亢進、呼吸困難、頻脈、悪心、嘔吐などの不快な症状が発現します。これらの作用を利用して、節酒あるいは断酒へと向かわせることができます。シアナミド(商品名:シアナマイド)は無味無臭の1%水溶液で、服用後10分ほどで抗酒作用が発現し、約24時間後には消失します。一方、ジスルフィラム(商品名:ノックビン)は白色の散薬で、ある程度体内に蓄積しなければ抗酒効果が得られませんが、服用を中止しても約1週間効果が持続するという特徴を持ちます。
 抗酒剤療法は飲酒の抑制が第一義ですが、ほかの意義もあります。患者さん本人にとっては、自らの断酒に必要なステップを実践しているという自覚を持つのに役立ちます。家族にとっては、抗酒剤を自ら服用する患者さんを見て安堵感を持ちえます。

(2)断酒補助剤アカンプロサートについて
 期待の新薬といえども、内服するだけでお酒を飲まなくなる魔法の薬ではありません。あくまでも本人がお酒をやめる意思を固めて、断酒生活に取り組む中で、再飲酒の衝動を緩和させる薬であるため、内服だけでは不十分で、従来通りの通院や自助グループ傘下による心理療法は必須です。実際、どこの医療機関でも処方できるわけではなく、きちんとした依存症の心理社会的療法が行える医療機関でないと処方ができません。
 内服の開始時期としては、入院・外来を問わず、アルコールを2週間ほど抜いて素面になった状態で、本人が依存に対する自覚を持ち、自ら断酒を決意してからが望ましく、本人に治療意欲がない場合に薬だけ飲ませるのは無効といえます。薬の効用に関しては、ゆっくりと効いてきて、何となくお酒を飲みたい衝動が以前に比べて低下し、自然とお酒のない生活が送れるようになったという感想が多いようです。従来タイプの抗酒剤とも併用が可能で、副作用も軟便程度で、比較的飲みやすい薬剤といえます。
(3)現在治験中の飲酒量低減薬ナルメフェンについて
 お酒を飲む1時間前に飲むと、脳に働いて少し眠
気がさし、飲みたくなくなり、お酒の量が減ります。大体、治験前の34割に減り、なおかつ楽しんでお酒を減らすことができ、社会生活を普通に送れるようになります。断酒の必要がないので使いやすい薬だと思います。
 抗酒剤と断酒補助剤という両翼が今まであり、真ん中に位置する節酒薬が約1年半後に使えるようになると、アルコール依存症の治療が幅広くできるようになり、治療がスムーズに進むのではないかと期待されます。
(くわしい講演内容は、来年3月発行予定の機関誌「ぎふ精神保健福祉」Vol.53に掲載する予定です。)