平成30年度総会・講演会の実施報告

  次のような日程で、岐阜県図書館において実施しております。
   13:00~14:00 理事会・評議員会
   14:20~14:40 総会
   15:00~16:30 講演会
 理事会・評議員会では、平成29年度の事業報告や会計報告、平成30年度の事業計画や会計予算が承認されました。

総 会

日 時
 平成30年6月12日(火) 14:20~14:40
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
議 題
 1.平成29年度 事業実績報告について
 2.平成29年度 収支決算報告について
 3.平成30年度 事業計画について
 4.平成30年度 収支予算について

講演会

日 時
 平成30年6月12日(火) 15:00~16:30
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
演 題
  「てんかんと精神科臨床」
講 師
 加藤秀明先生(須田病院院長)
講演の概要
(1)必要最低限のてんかんの知識
  てんかんの医学的な定義は「種々の病因によってもたらせる慢性の脳疾患で、大脳ニュートロ
 ンの過剰発射から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主訴とし、それに変異にとんだ臨床
 検査所見を伴う」(WHO 1973)です。
  てんかんは、決してまれな病気ではなく、有病率は1,000人あたり4~8人、発症率は10万人
 あたり1年間で約45人と頻度の高い病気です。
  てんかん発作の特徴は、反復して出現すること、同じ
 形で突然起こり短時間で消失すること、特徴的な脳波  異常を伴うことです。
  てんかんの原因は突発性(原因が推定できない)と
 症候性(原因が推定できる)があり、発作には、部分
 発作と全般発作があり、それによって右のような4つ
 の類型にグループ化できます。
  てんかんの治療は、内服薬を基本として手術療法な
 どがあります。薬にはいくつもの種類があり、興奮を
 抑える作用の仕方が異なるので、正確に発作型を評価したうえで適切な薬を選択することが大
 切です。
(2)てんかんの精神医学的側面
  てんかんにみられる精神症状には、発作と関連した一過性の精神および行動の障がいとして
 精神発作(幻聴、幻視、幻臭、不安、恐怖)、非けいれん性重積(意識障害や精神変調を示す
 状態)、発作後精神病(躁的な気分高揚、急性の幻覚妄想、錯乱、興奮)などがあります。
  てんかんは慢性疾患ですので、それなりの覚悟を必要としますが、それほど深刻にとらえるこ
 とはありません。治癒するてんかんもあり、発作の多くは抑制できます。てんかんにはいろいろな
 種類があり、自分のてんかんを正しく受け止め、楽観過ぎても悲観過ぎてもいけません。人格が
 どうこういわれる病気では毛頭なく、恥ずかしいこともないし、隠すこともありません。自信をもって
 生活しましょう。
(3)高齢者におけるてんかん
  高齢者のてんかんは、加齢に伴い脳卒中、脳腫瘍、頭部
 外傷など脳の損傷を受けやすくなることでてんかんを発症す
 る要因が増えます。一方、原因が明らかでないてんかん、
 それまでの 成長発達に問題がなく、普段通りの生活を送っ
 ている方が発症することもあります。高齢者てんかんに多い
 複雑部分発作では、短時間の意識減損や口をペチャペチャ
 させる、手をモゾモゾさせるなどの自動症がみられます。過去のエピソード記憶が失われるのも
 特徴的な症状です。てんかんは、脳出血障がい、認知症に次いで3番目に多い神経疾患ですの
 で、認知症診療にてんかんの知識が必要です。
  てんかんは、抗てんかん薬を服用することで発作を抑制することができますが、高齢者には相互
 作用の少ない薬を使うことが必要です。また高齢者のてんかんは軽症であるケースが多いのに
 加えて、薬物代謝もゆっくりとしているので薬の量も少なくて済み、発作をコントロールすることが
 できます。


平成29年度総会・講演会の実施報告

 今年度は日程が次のように変更となりました。
 <昨年度まで>
   11:00~12:00 理事会・評議員会
   12:40~13:00 総会
   13:30~15:00 講演会
 <今年度>
   13:00~14:00 理事会・評議員会
   14:20~14:40 総会
   15:00~16:30 講演会
 理事会・評議員会において、平成28年度の事業報告や会計報告、平成29年度の事業計画や会計予算が承認されました。
 その後、会員の参加による総会では、田口会長のあいさつの後、理事会・評議員会で承認されました。平成28年度の事業報告や会計報告、平成29年度の事業計画や会計予算が報告されました。
 総会後の講演会は、会員以外の参加希望者も加えて行われました。  

総 会

日 時
 平成29年5月31日(水) 14:20~14:40
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
議 題
 1.平成28年度 事業実績報告について
 2.平成28年度 収支決算報告について
 3.平成29年度 事業計画について
 4.平成29年度 収支予算について

講演会

日 時
 平成29年5月31日(水) 15:00~16:30
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
演 題
  「うつ病とリワーク~再発のない復職に向けて~」
講 師
 関谷道晴先生(養南病院院長)
講演の概要
 リワークとはreturn to workを略した言葉で復職を意味しています。養南病院は県内で2か所しかないリワークプログラムを行っている病院です。リワークは都会のオフィスで働く人が対象のものと思われていましたが、田舎でもうつ病で休職する人が増えてきて、リワークの必要性が高まってきました。そこで、養南病院では思い切って3年前からリワークを始めています。
(1)働く人のうつ病
 うつ病・躁うつ病の患者数は年々増加しています。病気休職者のうち精神疾患による休職者数は6割を越えています。第2回日本人の就業実態に関する総合調査(平成26年)によると、過去5年間で退職勧告など会社から意に沿わない行為を経験した人は約16%、過去3年間でメンタルヘルスの不調を感じたことのある人は約25%ありました。
 休職中も周囲や家族の目が気になり、どこでどうやって過ごすかが問題です。症状の消失が復職可能ではなく、会社に戻っても6割が再発してしまいます。
(2)リワークプログラム
 リワークプログラムでは、復職に向けたリハビリテーションを行い、仕事ができるようになるまでの回復を促します。これまでの行動や考え方を見直して、ストレスへのセルフケアの方法を身につけることで、うつ病の再発、再休職を防ぐことを目指します。
 リワークプログラムのメリットは次のようなものがあります。
 ・生活のリズムを整えられる。
 ・復職に対して自信が持てる。
 ・うつ病に対する知識とセルフケアの方法が身につく。
 ・コミュニケーション能力が上がる。
 ・共通の悩みを持つ仲間ができる。
 ・相談できるスタッフがいる。
 ・診断書があると職場の受け入れがよくなる。
(3)養南病院の実績
 3年間やってきて、養南病院リワークの傾向が見えてきました。現利用者を含めた148名をみると、50代が約40%、次いで50代、30代の順です。性別は男性が82%です。疾患別では双極性障がいが全体の25%、就労状況は休職者70%、離職者30%です。業種別では製造業や建設業など現業系が多く、会社規模では中小企業が多く、その半数はリハビリプログラムがありません。復職率は74%です。
 こうした実態を踏まえてリハビリプログラムを少し変えました。体力増進プログラムや手先を使ったプログラムで作業効率を見るようにしました。途中から気分障がい以外の人も参加可能なプログラムを追加しました。また、遠方で通えない人には支援アパートを用意し、発達障がいの傾向を持つ人の増加に対応して発達障がいの心理教育をスタートさせました。
 常にプログラムを見直しながら利用者、企業のニーズに応えていくことが重要です。また、経験豊富なスタッフはほとんどなく、スタッフの技能の習熟や研鑽が求められます。
 

平成28年度総会・講演会の実施報告

 午前中の理事会・評議員会において、平成27年度の事業報告や会計報告、平成28年度の事業計画や会計予算が承認されました。
 午後から平成28年度の総会及び講演会を下記のように開催いたしました。
会員の参加による総会では、田口会長のあいさつの後、理事会・評議員会で承認された平成27年度の事業報告や会計報告、平成28年度の事業計画や会計予算が報告されました。
 その後の講演会は、会員以外の参加希望者も加えて行われました。  

総 会

日 時
 平成28年6月14日(火) 14:20 〜 14:40
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
議 題
 1.平成27年度 事業実績報告について
 2.平成27年度 収支決算報告について
 3.平成28年度 事業計画について
 4.平成28年度 収支予算について

講演会

日 時
 平成28年6月14日(火) 15:00 〜 16:30
場 所
 岐阜県図書館 1F 多目的ホール 岐阜市宇佐4-2-1
演 題
  「ここまできたアルコール依存症治療~薬物治療にしぼって~」
講 師
 天野 宏一先生(各務原病院院長)
講演の概要
 アルコール依存症の治療は、「閉鎖病棟」でのアルコール離脱期(1014日)を除いて、飲酒の自由なところで病気を自覚し、“酒を断ち続ける”ことが唯一の回復の手段であり、それを実現するため専門医療機関への通院に加え、断酒会やAA(アルコホーリック・アノニマス)などの自助グループに参加し、断酒生活を積み上げていくことを主眼に治療が行われてきました。
 そこに新たに従来の抗酒剤(シアナマイド、ノックビン)のようにアルコールの代謝産物である「アセトアルデヒド」の代謝を阻害して悪酔いさせることで飲酒できない状態にするものではなく、脳内に作用して飲酒欲求そのものを抑えて“断酒生活の維持”を補助する新断酒補助剤(アカンプロサート、商品名:レグテクト)が平成255月に発売され、有効かつ強力な治療手段に加わりました。
 さらに、平成27年より飲酒量低減ナルメフェンの治験が進捗しており、ここ12年のうちに日本でも上梓されることと思われます。各務原病院でも11名の患者さんの協力を得て、1年間治験をしています。節酒薬のナルメフェンが使えるようになると、薬物療法が広範囲に亘ってできるようになります。
 以下、治療薬について簡単に説明します。

(1)抗酒剤について
 抗酒剤(嫌酒薬)には、アルコール酸化過程を阻害する作用があり、少量の飲酒下でもアセトアルデヒド蓄積によって顔面紅潮、発汗、心悸亢進、呼吸困難、頻脈、悪心、嘔吐などの不快な症状が発現します。これらの作用を利用して、節酒あるいは断酒へと向かわせることができます。シアナミド(商品名:シアナマイド)は無味無臭の1%水溶液で、服用後10分ほどで抗酒作用が発現し、約24時間後には消失します。一方、ジスルフィラム(商品名:ノックビン)は白色の散薬で、ある程度体内に蓄積しなければ抗酒効果が得られませんが、服用を中止しても約1週間効果が持続するという特徴を持ちます。
 抗酒剤療法は飲酒の抑制が第一義ですが、ほかの意義もあります。患者さん本人にとっては、自らの断酒に必要なステップを実践しているという自覚を持つのに役立ちます。家族にとっては、抗酒剤を自ら服用する患者さんを見て安堵感を持ちえます。

(2)断酒補助剤アカンプロサートについて
 期待の新薬といえども、内服するだけでお酒を飲まなくなる魔法の薬ではありません。あくまでも本人がお酒をやめる意思を固めて、断酒生活に取り組む中で、再飲酒の衝動を緩和させる薬であるため、内服だけでは不十分で、従来通りの通院や自助グループ傘下による心理療法は必須です。実際、どこの医療機関でも処方できるわけではなく、きちんとした依存症の心理社会的療法が行える医療機関でないと処方ができません。
 内服の開始時期としては、入院・外来を問わず、アルコールを2週間ほど抜いて素面になった状態で、本人が依存に対する自覚を持ち、自ら断酒を決意してからが望ましく、本人に治療意欲がない場合に薬だけ飲ませるのは無効といえます。薬の効用に関しては、ゆっくりと効いてきて、何となくお酒を飲みたい衝動が以前に比べて低下し、自然とお酒のない生活が送れるようになったという感想が多いようです。従来タイプの抗酒剤とも併用が可能で、副作用も軟便程度で、比較的飲みやすい薬剤といえます。
(3)現在治験中の飲酒量低減薬ナルメフェンについて
 お酒を飲む1時間前に飲むと、脳に働いて少し眠
気がさし、飲みたくなくなり、お酒の量が減ります。大体、治験前の34割に減り、なおかつ楽しんでお酒を減らすことができ、社会生活を普通に送れるようになります。断酒の必要がないので使いやすい薬だと思います。
 抗酒剤と断酒補助剤という両翼が今まであり、真ん中に位置する節酒薬が約1年半後に使えるようになると、アルコール依存症の治療が幅広くできるようになり、治療がスムーズに進むのではないかと期待されます。
(くわしい講演内容は、来年3月発行予定の機関誌「ぎふ精神保健福祉」Vol.53に掲載する予定です。)